一般的に機械学習モデルの実装や訓練は複雑になりますよね。
研究や業務に集中したいけど、
プログラムを書くのに多くの時間がかかってしまう
と感じる方も多いのではないでしょうか?
この記事では、効率的に機械学習モデルを実装する手助けをしてくれる強力なツールであるPyTorch Lightningの特徴や実装する方法を詳しく解説します。PyTorch Lightningを活用して、機械学習の実装を効率化しましょう!
PyTorch Lightningとは
PyTorch Lightningは代表的な機械学習ライブラリであるPyTorchをベースとした、モデルの訓練や開発を効率的に行うためのライブラリです。
概要と特徴
機械学習のプログラムは一般的に複雑であり、短期間で業務や卒業研究で利用するのは困難です。一方、PyTorch Lightningでは機械学習モデルの構築をより簡単に実装でき、ビジネシスや研究に集中できるメリットがあります。
PyTorch Lightningは2019年5月、William Falcon氏によって初めて公開され、PyTorchの軽量ラッパーとして世界中のエンジニアから注目を集めました。
データサイエンスに集中するため、コーディングのコストを最小限に抑えることをコンセプトに開発され、指定されたコードの書き方があります。誰が書いても共通する点はPythonと同じく、メンテナンス性の向上が期待できますね。
モジュール設計
PyTorch Lightningはモジュール化された設計を採用しており、いくつかのコンポーネントに分割されます。例として、3つの主な部品を見てみましょう。
- Trainer
- LightningModule
- LightningDataModule
名前から推測できるかもしれませんが、例えばモデルの訓練・検証・テストを制御するTrainerを用いると、訓練ループを全て記述する必要がなくなり、簡潔にモデルの学習を実装できます。
PyTorchとは異なり、LightningModuleではモデルの定義のみならず、損失関数や最適化手法、さらにはトレーニングループまでもまとめて管理します。
また、LightningDataModuleを用いることで、データの読み込みや前処理、検証用とテスト用の分割などを効率的に行えるため、コード全体的がコンパクトになる点が特徴的です。
PyTorch LightningはベースとなるPyTorchと同じく、Define-by-run形式を採用しています。ここではDefine-and-runとの違いを抑えておきましょう。
Define-by-run
- 実行中にモデルの計算グラフが構築される
- 演算処理は実行時に計算グラフに追加される
- 動的な制御や条件分岐が容易なため、柔軟なモデルの構築が可能
- PyTorch, Chainerなどで採用
Define-and-run
- 事前にモデルの計算グラフが定義される
- 定義後は変更することができない
- 処理の高速化が期待できる
- TensorFlow 1.xやTheanoなどで採用
PyTorch Lightningの学習方法
PyTorch Lightningの解説やサンプルコードは他の代表的な機械学ライブラリを比較すると少ない傾向があるため、どのような方法で学習を進めるかが大切です。
注意点
- PyTorchの基本的な理解
- 日本語の情報が少ない
PyTorchをベースとした設計であるため、PyTorchでの基本的な学習ループを理解する必要があります。さらに、PyTorch Lightningに関する日本語での情報は少ないことから、PyTorchをある程度学習することは理解を深めることに繋がるでしょう。
Lightningモジュールは他の機械学習ライブラリでは見かけない特有のtraining_stepやconfigure_optimizersなどのコードを実装することがあります。幅広い情報を得るために、英語での文献も活用して学習することが大切です。
公式チュートリアル
- 情報量が多い
- 正確な情報がまとめられている
- 英語で記載されている
PyTorch Lightningは公式ドキュメントが用意されており、正確なプログラムの記述法がまとめられています。ただし、最低限の情報で簡潔に記載するための情報ではないため、初学者にとっては理解が難しいかもしれません。
Webサイトの記事を検索し、気になる箇所について公式ドキュメントを活用すると効率的な学習ができるでしょう。英語での説明ですが、翻訳機を使って読み進めることがおすすめです。
PyTorch Lightningの公式チュートリアルはこちら↓
GitHubやQiitaでの記事
プログラムの倉庫とも言えるGitHubやQiitaの記事ではPyTorch Lightningでのサンプルコードが見つかる可能性が大きいです。実際にライブラリを使い方を見ると、「この場合は〇〇だな」のように幅広いパターンを理解できるため、積極的に活用しましょう。
GitHubやQiitaでの機械学習プログラムは必ずしも正確とは限りません。バージョンごとに記述方法の違い等があるため、実行時にエラーが出た場合は検索したり、公式ドキュメントを参考にして解決する必要があります。
PyTorch Lightningでの実装例
実際にCNNモデルの実装を通して、PyTorch Lightningでの記述がどれほど変化するのかを体験しましょう。基本的にモデルの構成はPyTorchと変わらないため、定義自体はPyTorchライブラリを参考にできます。
ライブラリのインストール
Windowsの方はコマンドプロンプト、Macの方はターミナルを開き、次のコマンドを実行してライブラリをインストールしましょう。PyTorch Lightningライブラリは、Pythonでインポートする際にはplとして読み込まれることがあります。
pip install pytorch_lightning
MNISTを学習するモデルの構築
以下は、手描き数字で有名なMNISTデータセットを学習するCNNモデルをPyTorch Lightningライブラリを用いて実装するプログラム例と実行結果です。
import torch
import torch.nn as nn
import torch.optim as optim
import torchvision
import torchvision.transforms as transforms
import pytorch_lightning as pl
# モデルの定義
class SimpleCNN(pl.LightningModule):
def __init__(self):
super(SimpleCNN, self).__init__()
self.conv1 = nn.Conv2d(in_channels=1, out_channels=32, kernel_size=3, padding=1)
self.pool1 = nn.MaxPool2d(kernel_size=2, stride=2)
self.conv2 = nn.Conv2d(in_channels=32, out_channels=64, kernel_size=3, padding=1)
self.pool2 = nn.MaxPool2d(kernel_size=2, stride=2)
self.fc1 = nn.Linear(64 * 7 * 7, 128)
self.fc2 = nn.Linear(128, 10)
def forward(self, x):
x = self.pool1(torch.relu(self.conv1(x)))
x = self.pool2(torch.relu(self.conv2(x)))
x = x.view(x.size(0), -1)
x = torch.relu(self.fc1(x))
x = self.fc2(x)
return x
def training_step(self, batch, batch_idx):
x, y = batch
y_hat = self(x)
loss = nn.functional.cross_entropy(y_hat, y)
self.log('train_loss', loss)
return loss
def configure_optimizers(self):
return optim.Adam(self.parameters(), lr=0.001)
def training_step(self, batch, batch_idx):
x, y = batch
y_hat = self(x)
loss = nn.functional.cross_entropy(y_hat, y)
self.log('train_loss', loss)
return loss
def configure_optimizers(self):
return optim.Adam(self.parameters(), lr=0.001)
# データローダーの設定
class DataModule(pl.LightningDataModule):
def __init__(self, batch_size=64):
super().__init__()
self.batch_size = batch_size
def prepare_data(self):
transform = transforms.Compose([transforms.ToTensor(), transforms.Normalize((0.5,), (0.5,))])
self.mnist_train = torchvision.datasets.MNIST(root='./data', train=True, transform=transform, download=True)
self.mnist_val = torchvision.datasets.MNIST(root='./data', train=False, transform=transform, download=True)
def train_dataloader(self):
return torch.utils.data.DataLoader(self.mnist_train, batch_size=self.batch_size, shuffle=True)
def val_dataloader(self):
return torch.utils.data.DataLoader(self.mnist_val, batch_size=self.batch_size)
data_module = DataModule(batch_size=64)
model = SimpleCNN()
# CUDAが利用可能なら使う
if torch.cuda.is_available():
model = model.cuda()
# モデルの訓練
trainer = pl.Trainer(max_epochs=5)
trainer.fit(model, datamodule=data_module)
「実行結果」
視覚的にモデルの訓練が進む過程が理解でき、層の構成やパラメータもまとめて表示されます。特にモデルの学習ループの記述が必要なく、全体的にスッキリとして印象を受けたのではないでしょうか?この簡潔さがPyTorch Lightningの魅力です。
PyTorchとの違い
PyTorchをより簡潔に実装できるライブラリとのことですが、具体的にどれほどの差があるかを確認してみましょう。PyTorch Lightningでは省略できた訓練ループをPyTorchで実装した場合は以下のようになります。
# PyTorchでの訓練ループ
num_epochs = 5
for epoch in range(num_epochs):
# モデルの訓練
model.train()
total_loss = 0
for batch_idx, (data, target) in enumerate(train_loader):
optimizer.zero_grad()
output = model(data)
loss = criterion(output, target)
loss.backward()
optimizer.step()
total_loss += loss.item()
avg_loss = total_loss / len(train_loader)
print(f"Epoch {epoch+1}/{num_epochs}, Training Loss: {avg_loss:.4f}")
PyTorch Lightningでは上記のループを書く必要がなく、とてもコンパクトなコードでモデルの訓練や検証を実行できます。機械学習をより簡潔に実装するためにも、積極的に活用していきましょう。
『Tech Teacher』3つの魅力
魅力1. オーダーメイドのカリキュラム
『Tech Teacher』では、決められたカリキュラムがなくオーダーメイドでカリキュラムを組んでいます。「質問だけしたい」「相談相手が欲しい」等のご要望も実現できます。
魅力2. 担当教師によるマンツーマン指導
Tech Teacherでは、完全マンツーマン指導で目標達成までサポートします。
東京大学を始めとする難関大学の理系学生・院生・博士の教師がが1対1で、丁寧に指導しています。
そのため、理解できない箇所は何度も分かるまで説明を受けることができます。
魅力3. 3,960円/30分で必要な分だけ受講
Tech Teacherでは、授業を受けた分だけ後払いの「従量課金制」を採用しているので、必要な分だけ授業を受講することができます。また、初期費用は入会金22,000円のみです。一般的なプログラミングスクールとは異なり、多額な初期費用がかからないため、気軽に学習を始めることができます。
まとめ
・魅力1. 担当教師によるマンツーマン指導
・魅力2. オーダーメイドのカリキュラム
・魅力3. 3,960円/30分で必要な分だけ受講
質問のみのお問い合わせも受け付けております。
まとめ
PyTorch Lightningライブラリを利用すると複雑な機械学習のモデルを比較的シンプルに実装できます。ある程度、機械学習の訓練ループやPyTorchに関する知識を持つ方や、短期間で卒業研究や業務に機械学習を活用したい方は是非、PyTorch Lightningを用いて深層学習を実装してみましょう。