こんにちは!Tech TeacherのKids Blog編集部です。
プログラミングに慣れ、ゲームやロボット作りを楽しんだら、AIのことも学んでみましょう。
AIって難しいの?子ども向けのAIの教材はあるの?
こちらでは、AIについてわかりやすく解説します。
AIとは
AIはArtificial Intelligence(アーティフィシャル インテリジェンス)の略です。Artificialは「人工的な」、Intelligenceは「知能」という意味です。
日本語では「人工知能」と呼んでいます。
「知能」というと、人間のような知能を思い浮かべますが、AIはまだそこには至っていません。人工知能の研究はまだ試行錯誤を繰り返している段階です。
また、言葉のイメージからAIは指示を出すと何でもやってくれそうですが、「指示を正確に出すとその通りにやってくれる」のは「自動化」ですので、ここでは分けて考えます。
AIと自動化は別のもの
AIと自動化の手法は違います。
自動化のための従来のプログラミングでは、すべての命令を「コード」で書いてコンピューターに命令をしてきました。細かいルールの指示をすると、機械はタスクをこなします。
これは、単純で反復の多い作業に向いています。
一方、AIには細かいルールを与えません。その代わりにたくさんのデータと答えを示して「学習」させることが特徴です。
ルールを細かく教えることには限界がある
コンピューターが1940年代に生まれてから、人間はコンピューターに「命令どおりに正確に仕事をする」ことを指示してきました。その結果コンピューターは、同じルールの下では人間より遥かに速く正確に大量の仕事をこなすことができるようになりました。これからも人の手に代わる機械が増えることでしょう。
しかしそれを極めても、従来のプログラミングではできないことがあります。それは「人間のように見たり聞いたりしたことを理解する」ことです。
たとえば、カメラで撮った「X」と「O」について考えてみましょう。人は子どものときにこれらの形と名前を覚えました。しかし、初めてこの画像をみるコンピューターには、ピクセルと呼ばれる小さな正方形の集まりにしか見えません。
従来のプログラミングでは「X」と「O」を見分けるのに、中央と四隅のピクセルが塗りつぶされていれば「X」、中央と四隅のピクセルが空白なら「O」という条件わけで判断させます。
しかし、文字の位置がずれていたり小さく書かれたりしていると、どちらの条件からも外れてしまいます。
そこで、新たな条件を細かく設定していくと、ルールが増えすぎてしまいます。
能力を超えるルールを与えたとき、そのコンピューターは止まってしまいます。
AIでは、ルールを細かく教えません。
AIの構想はかなり早くからありましたが、よい「学習」方法が見つからず、なかなか実現しませんでした。それが、大量のデータを簡単に集められるようになったこと・ニューラルネットワークを使ったディープラーニングという新しい学習方法が生まれたことで、AI研究が加速しました。
次に、このニューラルネットワークについて簡単に説明します。
ニューラルネットワーク
初期の研究者は鳥・ネズミ・犬などさまざまな動物の脳をまねてコンピューターに学習させようとしました。その過程で、人間の脳ほど学習するのに優れているものはないことがわかってきたのです。
私たちの脳はニューロンと呼ばれる特別な細胞で構成されています。ニューロンの一方の端からたくさんの信号が入力されると、ニューロン内で統合され、反対の端からは一つの信号が出力されます。
また脳内の数十億のニューロンはすべて相互に接続しており、これを生物学的ニューラルネットワークといいます。
コンピューターの研究者もそれをまねて、多層のニューラルネットワークを考えました。
特に、中間層を増やして学習させることをディープラーニングといいます。
それぞれの層では、与えられた関数で計算をします。一つの層の出力は次の層の入力となり、それを続けて最後に出てきた答えに対して、人が正解か不正解かをコンピューターに教えます。
次は、その関数に「重み」と「バイアス」をかけることで、誤差の調整をします。これを多くのデータを使って行うことでコンピューターは正しい答えを出すようになります。
こちらのサイトでは「正解」「不正解」を教えることでコンピューターに学習させる体験ができます。
引用元:AI for Oceans
次は、現在のAIの代表的な4つをご紹介します。皆さんの生活の中にすっかり浸透していて、これもAIだったのか!というものもあるかもしれません。
身近で使われているAIは?
「見る」→「理解する」(画像認識)
画像や動画をみて理解するシステムです。
スマートフォンの顔認証や、有名な「Googleの猫」も画像認識の例です。
医療現場でのさまざまな画像診断や、野生動物の保護の助けとしてもAIが導入され始めています。
こちらは、Googleが作ったオーケストラの指揮者を体験できるAIです。
人の関節の動きを画像認識し、それに合わせて演奏をしてくれます。後で紹介する機械学習「PoseNet」を使用しています。
引用元:Semi-Conductor
「聞く」→「書き出す」(音声認識)
人間が発する声を認識してテキストに書き出したり、話した内容に対して反応したりするシステムです。
自動文字起こしやスマートスピーカーですでに使われています。
音楽の再生・停止を音声で操作できるほか、家電と接続することで照明やエアコンなどの操作を音声で行うことができます。
「読む」・「聞く」→「理解する」→「話す」・「翻訳する」(自然言語処理)
人が日常的に使う言語を理解させ、処理を行うためのシステムです。
言語を扱うのは大変難しい処理ですが、文法を教えないことで、AIは言葉を理解することができるようになりました。
迷惑メールフィルターやSiriやAlexaとの会話、さらに、検索エンジンの検索結果やGoogle翻訳にもAI機能が使われています。
「予測する」
人がAIに期待することのひとつとして、予測があります。
AIは膨大な量のデータを分析できることから、生産設備の故障予知や小売店の来客・売上予測などに用いられ始めました。
あなたにおすすめの商品や音楽を選ぶのもAIの仕事です。
こちらのサイトは、AIが予想するおもしろい例です。じゃんけんを繰り返すうちにあなたの癖を読み取って徐々に強くなっていきます。
引用元:AIじゃんけんマシン
AIが苦手なものは?
AI“本人”にとると、苦手なものはありません。
なぜなら、必ず何かの答えを出すように作られているからです。
それが見当違いの間違った答えでも、「これは自信がないな…」と言いながら答えを出すことはありません。
ですから私たち人間は、AIが自信をもって出した答えをうのみにせず、本当にそれで正しいのか?と常にチェックをする必要があります。
良いAIシステムは良いデータでできている
さて、ここまで読んできたあなたは良いAIシステムには必要なものは何かわかってきたことでしょう。AIは学習して構築されるシステムです。
ですから、私たちがAIに対してしなければならないことは、たくさんの品質の高いデータで学習させることです。
では、それほど重要なトレーニングデータをどうやって集めればよいのでしょう?
集めやすいデータと集めにくいデータ
実は、コンピューターはすでに私たちからトレーニングデータを集めています。
例えば、多くの人が一つの商品について評価をしたとしましょう。評価はばらばらです。
しかし、あなたがその商品について評価をすると、AIはあなたと同じような評価をした人に重みをつけます。コンピューターは、次回あなたに商品を推薦するときに、先ほど重みをつけた分を含めて新しい商品をおすすめしてくれます。
実際に多くのメディア・音楽・買い物の推奨システムは、何百万ものユーザーから集めた評価をトレーニングデータとして利用しています。
これは、私たちが特に意識しなくてもデータが集まっていく例です。
次に紹介するのは「機械学習の研究に協力してください」と前置きしたうえでデータを集めている例です。
引用元:QUICK,DRAW!
これはGoogleのサイトです。あなたの描いた落書きを認識してくれると同時に、手書きデータを集めています。
医療現場ではどうでしょう?
医学関係者は医療画像をトレーニングデータとしてコンピューターに病気の認識と診断方法を教えます。
AIが病気を正しく特定できるまでには、何万枚もの画像と、着眼点を理解している医師によるトレーニングが必要ですが、個人情報取扱いの観点から、トレーニングデータとしての集積はまだ十分に進んでいません。
AIのバイアス問題
AIの学習ではデータが大量に必要だということがわかりました。
しかし、量が多いだけでは質の高いデータとはいえません。
データ選びは慎重にしなければいけません。なぜなら、データを選ぶときにその人の好みや思い込みが入ってしまうからです。
トレーニングデータが偏っていると、バイアスと呼ばれるものを生み出し、AIは偏ったデータの一部を優先して、他の部分の優先順位を下げたり除外したりしてしまいます。
データを選ぶときの注意点
AIは入力されたトレーニングデータと同等の力しか発揮できません。つまり、データ以上の素晴らしい発想は期待できません。
機械学習用のデータを選ぶことは、コードの代わりにトレーニングデータを使いアルゴリズムをプログラミングしているのと同じです。
したがってトレーニングデータを集めるときは、特に次の2点に注意しましょう。
コンピューターを正確にトレーニングするのに十分なデータかどうか?
データは偏りなく、考えられるすべてのことを網羅しているかどうか?
また逆に「AIが〇〇の予測や判断を出した」と耳にしたら、そのAIがどんなデータで「学習」したかを気にするようにしましょう。
今後私たちがいろいろな場面でもっとAIに頼るようになっても、AIは決して万能ではないことを私たち全員が理解しておくことが重要です。
次に、お子さんがAIを使って、簡単にAIモデルを作れるツールをご紹介します。
小学生向けおすすめAI学習教材
利用するのは、TensorFlow(テンソルフロー)です。
TensorFlowは、Googleがオープンソースで提供する機械学習プラットフォームです。
2015年にオープン化され、パソコン1台でAIを使うことのできるツールです。
Teachable Machine
Teachable Machine は、画像認識と音声認識のAIモデルを作ることができるサービスです。Googleが制作しました。
ML2Scratch
引用元:ML2Scratch
ML2Scratchは石原淳也氏が制作したツールです。
画像認識のAIモデルを作ることができます。これもTensorFlowの機械学習を使っています。
こちらのサイトには、ML2Scratchの使い方や応用例などが紹介されています。
https://champierre.github.io/ml2scratch/
AIブロック by Tech Park
AIブロックもTensorFlowの機械学習を利用します。
じゃんけん・画像認識・音声認識を使ったAIモデルを作ることができます。
まとめ
私たちはAIを日常生活の中ですでに体験しています。
AIに何ができるかということを考えるのはわくわくすることですが、同時に責任をもってAIを構築し、正しいアプローチで問題を解決していかなければいけません。
重要なのは、AIの社会的影響の大きさと、予期せぬ結果を招かないようにしないといけないことです。コンピューターができることではなく、コンピューターがすべきことについて考えながら、AIモデルを作っていきましょう。